「庭で楽しむ音 その2」

このブログの「庭で楽しむ音」の記事の中で、水琴窟が現代風にアレンジされているという話をちらっと書きました。
元々あったはずの手水鉢は無くなってしまい、置物として、また水を循環させて使っていることから「エコ」の象徴として、活用されているようです。

今様にアレンジされた水琴窟の有名な例が京都駅ビルにあります。地下1階コンコースに設置されたモニュメント「火の鳥水時計」がそれです。「火の鳥(フェニックス)」は言うまでもなく手塚治虫氏の同名の漫画に由来します。そして、彼女(彼?)の足元には氏が唱えていた「ガラスの地球」があり、さらにその下に水琴窟が埋め込まれています。こうして繰り広げられる水の循環が小宇宙をあらわしているのだとか。手塚ワールドをも古都の伝統の中で取り込んでしまう京都の魔力、恐るべしでしょうか?
ちなみに、この「火の鳥水時計」は待ち合わせスポットとして活用されているそうです。

昔の人々が静かな庭で自然の音をたのしむ為の工夫の一つが「水琴窟」ですが、他にも「ししおどし」があります。一般的に「ししおどし」と認識されている仕掛けは、実は「添水(そうず)」といって、「ししおどし」の一種に過ぎません。「ししおどし」にはもう一つ「鳴子」というものがあり、これと2つあわせた総称が「ししおどし」というわけです。
竹筒が岩などを打つ「ポン」という音を利用する「添水」は京都の詩仙堂のものが余りにも有名で教科書等にも紹介されていることから、一般に「ししおどし」=「添水」というイメージが定着してしまったようです。

「水琴窟」が小さな音であるのに対して、「鳴子」や「添水」は大きな音がします。これは、「鳴子」や「添水」が元々は畑を荒らす動物を音で威嚇して追い払う道具であったことに関連します。また、「ししおどし」を漢字で「鹿嚇し」と書くのもこのためです。(鹿による食害は現代でも問題になっていますが、これは昔も同じだったようです。)

「鳴子」や「添水」の詳しいことはまたいつか、改めて触れさせていただくとして、今日はこれまで。

(裕)