このブログの中で『庭で楽しむ音』と題して2度ほど水琴窟などのことを書きました。その文末で、添水や鳴子のことは改めて、と言っていましたが、今回はその内の「添水(そうず)」の話です。
「添水」は一般的には「鹿威し」と言われているものですが、厳密には少し異なります。「鹿威し」の「鹿」は鹿だけでなく田畑を荒らす獣をひっくるめていうものです。つまり田畑を荒らしにくる獣を「威す」道具・仕掛けのことを「鹿威し」といい、その一つに「添水」があります。
「添水」の仕組みその物は極めてシンプルです。竹筒の中に水をためることにより竹筒の重心を移動させ、その結果、竹筒をひっくり返してに石を打ってコンと大きな音を出します。その瞬間に竹筒内部の水がこぼされ、反動で竹筒は元のポジションに戻り(この瞬間にも音がでます)、再び次の「コン」に向かって水をためます。
溜まった水によって竹筒がひっくり返った時にでる音と、空になった竹筒が元のポジションに戻ったときに出る音のリズムが庭をめでる時の間にマッチし、遠州公によって改良の上で茶庭に取り入れられました。獣を威すための「音」に、人間は風流を感じてしまったようです。
添水(26秒)
現代社会の中では、日本庭園や寺院などの特別な場所でしか見る(聞く?)ことができなくなってしまいましたが、元々は日常生活の中から生まれた先達の知恵であり、かつては日常の中に当たり前に存在していたものでした。
ということは、現在の「当たり前」はもしかすると何十年かのちには「当たり前ではなくなっているのかもしれません。
(裕)