音の臨場感

ただいま、オリンピックシーズンの真最中です。リオデジャネイロはもちろんそうですが、2020年の開催を控える東京も徐々に盛り上がってきています。
オリンピックの一つの楽しみ方は音に注目することです。各テレビ局は臨場感あふれる音を鮮明に記録し、我々に届けてくれます。

ところで、「音の臨場感」とはどういうことでしょうか。簡単にいえば、「あたかもその場にいる」かのような感じ方を表す表現です。
そこで重要なのは音の方向感です。ボールが右から飛んできたとき、音は左から鳴ってはいけません。視覚と聴覚が一致してはじめて空間認知がうまくいきます。

人間は両耳で音の方向を知覚します。耳の形は複雑で非対称であり、そのため音源から鼓膜までの音の経路は角度に依存します。我々は無意識に角度による特性の違いを学習し、音の到来方向を推定しているわけです。まるで精密機械のようですね。
角度に依存する音源から鼓膜までの特性は伝達関数として表すことができるため、工学的に測定したりシミュレーションしたりすることもできます。この分野はとても面白く、応用範囲も広がりつつあります。深入りしたい人には以下の書物をお勧めします。
Spatial Hearing (The Psychophysics of Human Sound Localization)

ただし、録音技術が進んでいるとはいえ、やはり現地で見たり聞いたりすることが一番ですね。2020年こそ楽しみです。日本がんばれ!

(桜)