言語の伝来

普段私たちは何気なく言葉(言語)をコミュニケーションの道具として使っていますが、現在世界には数千の言語が存在すると言われています。一体そのルーツはどこにあるのか、非常に気になるところですが、大局的には、各地で独自に発達してきたか、どこかにルーツがあって、それが伝わる中で次第に変化してきたか、という二説になることはある程度想像できます。

これに関連して、昨年一つの研究結果が発表されています。
「世界の言語はアフリカから離れれば離れるほど、音素(言葉の最小単位の音)の数が減っていく」ことを突き止めたオークランド大学のアトキンソン博士が、「すべての言語はアフリカ言語が元になっており、伝播の過程で音素を失っていった」と発表、現在その説が支持を集めているそうです。

【主な言語の音素数】(MailOnline 17th April, 2011より抜粋)

  • ハワイ語: 13
  • 日本語: 20
  • タガログ語: 23 (フィリピン)
  • 韓国語: 32
  • 中国語(マンダリン): 32
  • フランス語: 37
  • ロシア語: 38
  • ドイツ語: 41
  • 英語: 46
  • クルド語: 47 (イラク)
  • ダハロ語: 59 (ケニヤ)
  • ハザ語: 62 (タンザニア)
  • アイルランド語: 69
  • アチ語: 91 (ダゲスタン共和国/ロシア)
  • シュー語:141(カラハリ砂漠/南アフリカ)
  • サン人のブッシュマン語: 200(南アフリカ)

おそらく多種多様な理由、形態で言語は伝わり、変化していったのでしょうが、言語(言葉)が他の言語へそのまま取り込まれる例は、皆さんよくご存じのことと思います。
そこには、文化的な影響力の強さが反映されているケースが多く見られます。中世から近世にかけて、アラビア語圏で文化が飛躍的に発展し、特に化学分野で当時の欧州はじめ諸外国がその知識と語彙を積極的に取り入れたため、現在の化学用語の中にはアラビア語起源のものが多く存在していることは広く知られています。
日本にはそれらが、古くは漢語を通して、その後ポルトガル語やスペイン語、オランダ語を通して、そして明治以降は英語やフランス語を通して入ってきたようです。
(化学用語例;アルカリ、アルコール、ガーゼ、ギブス、ソーダ等)

さて、翻って現在の日本語を見てみるとどうでしょう。
「Sukiyaki」や「Sushi」、「Tempra」など食文化に関する言葉はもとより、「Kaizen」、「Zai-tech(財テク)」などの経済用語、「Karaoke」や「Koban(交番)」に留まらず、最近では「Manga」や「Otaku」などなど、日本文化の象徴であるこうした新しい単語が次々と英語を中心とした外国語に取り入れられています。

約7万年をかけて、音素数が少なく最も進化した日本語が、今度は逆に世界に向けて、その文化とともに強力なメッセージを発信しているということが言えそうです。全ての言語のルーツとされるアフリカの人々にも、7万年の時を遡り、こうした日本の文化的メッセージが届くことを切に願いたいと思います。

(摸)