コンサートの当日に練習?

コンサートの開演は18:30頃。でも演奏家は午前中からホールに入って何かしています。何をしているのでしょうか?曲をまだよく覚えていない?指使いに不安なところがある?一流の演奏家がまさか曲の練習?

 実は、演奏家はその日のホールの音響特性にあわせて、舞台の上で演奏する位置や方向、それから演奏方法の調整を繰り返し行っているのです。

 では、ホールの音響特性とはなんでしょうか?ホールでは演奏者から聴取者に届く音に2種類の音があります。ひとつは直接音、もうひとつは間接音です。間接音とは、楽器から出た音がホールの壁、天井、床に反射して、聴取者に届く音のことです。直接音は読んで字のとおり。ホールのコンサートでは、聴取者に届く音の約9割が間接音なのです。どのような間接音が聴取者に届くかがホールの音響特性と言えます。

 難しいことに、この音響特性はホール毎にかなり違っています。また同じホールでも天候によって音響特性は変わります。午前中は晴れていても、夕方から雨になることもあります。しかも、ホールの音響特性はお客が入ると変わります。演奏家はさまざまな条件を考慮して、本番の間接音をイメージして午前中から調整していたのです。

(太)