日本人の耳

6月中にブラジルで開催されていたコンフェデレーションズカップは、ご覧になりましたでしょうか。テレビを見ていたサッカーファンは気づいたかもしれませんが、日本xイタリア戦で日本チームが現地のサポーターの熱い応援を受けていました。その象徴のひとつは、パスのたびに「オレー」という声援です。

「オレー」という言葉の意味には諸説ありますが、ここで取り上げたいのはその発音です。この言葉はスペイン語とポルトガル語で使われますが、「e」という母音の発音が違います。スペイン語の母音は日本語と同じで、「a」、「i」、「u」、「e」、「o」しかありません。その中、「e」の発音は日本語とほぼ同じです。一方、ポルトガル語の母音は鼻音化母音を除き7つあります。「e」と「o」にそれぞれ2種類(openとclose)あり、「オレー」の「e」は日本語にないタイプの「open」です。
しかし、面白いことに日本人の耳にはその違いがわからず、同じように聞こえてしまいます。それは乳幼児のときに母音の識別能力が脳にプログラムされ、大人になってからそれを変更することが難しいからです。

識別したことのない音を初めて識別・発音しようとすることが外国語を学ぶ難しさであり、楽しさでもあります。発音に関しては口の動きを体の運動に例えて連想するアプローチがありますが、耳で区別できるようになるためにはまた別の方法が研究されています。個人的には、ネイティブスピーカーの発声を録音して何度も聞き、自分の声も録音して比較したりするというオーソドックスな方法が最も有効に見えます。
そうすれば、「オレー」と聞くだけで、レアルマドリッドの応援団なのか、コリンチャンスの応援団なのかわかるようになるのかもしれません。

(桜)