「君は独りぼっちじゃない」

日本のJリーグだけでなく世界的にも、サッカーのリーグ戦ではホーム・アンド・アウェーという対戦方式が一般的です。
ホーム・アンド・アウェーとは、ホーム(本拠地スタジアム)ゲームとアウェイ(敵地スタジアム)ゲームを各1試合ずつ行う対戦方式です。

サッカーでは、「アウェーを制するものがサッカーを制す」という、永らく言い伝えられる格言があり、敵地で勝利することが如何に難しいかを伝えています。
アウェーでの試合は、なぜこれほど難しいのでしょうか。

サッカーの神様と言われるペレや、イングランドの伝説・ボビーチャールトンは、「ホームスタジアムは自分の家だ」と言っていたといいます。
慣れたホームスタジアムでは、余計なストレスを感じることなく、一つ一つのプレーに集中できます。
逆に、アウェーチームにとってはトイレや控室、入場口の場所の違い、そんな些細なことが積み重なり、次第に大きなストレスを感じます。
また芝の状態や凹凸、プレーにダイレクトに響く要因で違いがあれば尚更です。
その中で一番、大きなホームチームのアドバンテージと言われるのが、サポーターの存在です。

満員のスタンドから、試合前・試合中に発せられるサポーターの声援、それが醸し出す雰囲気は、ホームチームの選手を高揚させるだけでなく、チームの欠点ですらカバーすることができます。
反対にアウェーチームの選手を委縮させたり、時には審判に対してもプレッシャーを掛け、判定に影響を与えることも度々です。

そんな試合にまで影響を与えるサポーター達ですが、その中でも特別熱狂的とされるのが、1892年に設立されたイングランドのサッカーチーム「リヴァプールFC」のサポーター達です。
彼らが試合前にスタジアムで必ず合唱する応援歌(英語では”Chant”と言います)「You’ll Never Walk Alone=君は独りぼっちじゃない」は正に選手と共に戦うサポーターの気持ちが表れています。
日本でも昨年の東日本大震災以降、一時期の飲料メーカのテレビCMで流れていたこの曲を知っている人も多いと思います。

2004-2005シーズン、欧州で最も権威のある大会「UEFA Champions League」決勝。
リヴァプールFC VS ACミラン(イタリア)の一戦では、リヴァプールFCが前半終了時点で0-3のビハインド(サッカーでは絶望的な点差)から、ハーフタイムに唄われたこの曲を境に、後半同点に追いつき勝利したという、奇跡的な勝利が生まれました。

春が近づき、日本のスポーツシーズンもそろそろ開幕です。
是非、皆さんもスタジアムでサポーター達の気持ちの宿った声援を感じてみて下さい。

(信)