ビール造りと音

ビール造りのプロセスにおいて音は重要な役割を担っています。

仕込みの最中、酵母が糖分を食べて増殖してゆく段階で二酸化炭素とアルコールが生成されます。発酵が活発な間は麦汁が常にプツプツと泡立ち、発酵が終わりに近づくにつれ静かになってゆきます。このプツプツという音を聞くことによって酵母の調子、酵母の量、麦汁の糖度など様々な情報をくみ取ることができます。
(醸造士の中にはこの音を「酵母の声」と表現する方もいらっしゃいますが、まさにその通りかもしれませんね)

近代的なビール工場では雑菌による汚染を防ぐため、密閉したステンレスタンクの中で発酵させますが、木桶の中で発酵させる伝統的な手法をとる醸造所も存在します。麦汁が外気に触れるので、ビールが雑菌で汚染されるリスクは増えるのですが、蔵に住んでいる自然の酵母を取り込みそこでしか作れない味わいに仕上がります。

開放された木桶の中で元気に発酵する酵母の声は非常に心地よく、目を閉じて聞いているとまるで無数の酵母達の会話が聞こえてくるかのような、くすぐったくて愉快な気持ちになってきます。

ステンレスタンクの中で発酵させる場合も、余分な炭酸ガスがバルブから逃げる「シューシュー」という音が出ますので、ある程度酵母の状況を聞きとることができます。

熟練の醸造士は日々この酵母の「声」に耳を傾けながら、美味しいビールに仕上げるための調整を行っているのですね。

もしこの酵母の「声」を聴いてみたいというビール好きなあなた。ビール工場の無料見学会に参加し、場所とタイミングが合えば聴くチャンスに巡り合えるかもしれません。この夏休み、是非ご家族ご友人と共に訪れてみてはいかがでしょうか。

(笹)