人間は左右の耳を使って、音の到達時間や音色の差を常に検知しています。左右の到達時間に1ミリ秒ほど
の時間差があれば、大体の人は「方向感」を感じます。つまり、「右耳が先に音を検知した場合、その音はおそらく右側から来ている」ということを無意識にわかるのです。長い年月を経て進化したおそるべき能力ですね。
現代人はそういった能力についてあまり意識しません。しかし、左右のバランスと方向知覚は日常生活の一部
であることは間違いありません。例えば、片耳に耳栓をつけた場合、車の運転やその他の動作が困難になることは容易にわかります。左右のバランスがくずれ、音の到来方向がわからなくなるためです。
そういった左右の音の微妙な差を検知する能力をうまく活かす方法はないでしょうか。
実はこの能力が積極的に活用されている事例があります。それは「エコーロケーション」というものです。
エコーロケーションというのは、口で音を発生し、その反射音をもとに周りの状況を把握するというテクニックのことで、一部の視覚障碍者により利用されています。
エコーロケーションをうまく利用するためには、なるべく広い帯域の音(周波数成分の偏りがない音、例えば
舌打ちのような音)を口で発生し、耳で多くの情報量をとらえることが必要です。
一般社会にも、人間による方向検知能力をより積極的に活用できるシーンが他にたくさんあるはずです。考
えてみる必要がありそうですね。
(桜)