ボブ・ディランと非整数次倍音

洋楽に詳しくない私でも、ボブ・ディランの「風に吹かれて」のサビくらいは知っています。
たぶん村上春樹の小説か浦上直樹の漫画で、あの魅力的な嗄れ声(ダミ声)の持ち主のことをボブ・ディランと認識するようになったと思います。

「ダミ声」。漢字で書くと「濁声」「訛声」。
ダミ声の好き・嫌いは主観的なものですが、一般的にはあまり良いイメージは無いようです。
ダミ声は、喉をしっかり開かず、喋ったり歌ったりすることで声が擦れたり、タバコや飲酒等で喉が荒れたり、声道にできたポリープが原因となることもあるようです。

ダミ声を治すためにというボイストレーニング等もありますが、その特徴的な声を売りにしたタレントや歌手の方も、多くいらっしゃいます。
北野武、明石家さんま等の人気芸人、歌手の森進一、木村充揮(天使のだみ声)などなど。

ダミ声には、非整数次倍音が含まれています。

  • 倍音:基本となる音の周波数の倍の周波数を持つ音
  • 整数次倍音:その倍音が整数値で表現できるもの。オーボエやクラリネット等
  • 非整数次倍音:不規則で整数表現できないもの。尺八や雨や風の音、川のせせらぎ、虫の鳴き声など自然の音 等

整数次倍音の声は、きれいで透き通ったを出すオペラ歌手などに代表される、荘厳でカリスマ性を感じさせる声。
非整数次倍音の声(=ダミ声)は、親密性や情緒性に富み、やさしい印象を与える。
ダミ声は、直接感性にうったえることが得意なようです。

ノーベル文学賞受賞について、ボブ・ディランは2016/11/25現在、メディアには直接登場せず、12月の授賞式も欠席するとのこと。
欠席した場合は、6ヶ月以内に講演をする義務があるそうですが、このダミ声で何を語るのでしょう?
あるいは、さらなる予想外の行動があるのか。
いずれにせよ、偉大な先駆者らしいと思います。

(一)