デジタルの波が私たちの暮らしを便利にしてくれました。スマートフォンやタブレットのようなガジェットは欠かせないものになり、それ以前の世界はもはや遠い昔のように感じます。
人々の音楽の聴き方も変わりました。最初は生演奏が唯一の方法でしたが、レコード、カセットテープ、CDがあらわれ、MDなどを経て、デジタルの時代に突入しました。今は音楽をインターネットからダウンロードしたり、定額料金サービスを利用したりするのがメインです。
ところが、その認識で最近の家電量販店を訪れると、実際に目にする現状に驚かされます。遠い過去に姿を消していたはずのレコードプレイヤーやカセットレコーダなどが健在で、逆にラインナップが増えているのではないか。けっきょく自分も、懐かしさなのか好奇心なのか、知らない気持ちに駆られて手をのばし、カセットを再生するレトロなガジェットを買ってしまいました。
人の購買意欲は複雑で、理屈で説明できないことが多いです。「衣食住」の単純なニーズが薄れ、品質と価格、需要と供給といったシンプルな論理が成り立たず、主観や感情がものをいう世に変わりつつあります。ITやソフトウェアの分野でも、単純な品質や精度で説明できない「心に響く力」の秘密を知りたいところですね。
先週は知り合いが参加するアマチュア楽団の演奏会を見に行く途中でこういったことを考えていました。プロには及ばない、多少ぎこちない演奏になるに違いないが、多少ぎこちない演奏になるところがまさにアナログで、魅力的です。やはりアナログがいい。
(桜)