鳥の視点・虫の視点

圧倒的な量のデータを武器にしたグーグルなどアメリカ企業による自動翻訳技術の最近の進歩は目覚ましいものがあります。日本でも2020年には、訪れた外国人旅行者が言葉の壁を感じずに日本の”おもてなし”を満喫できる、そんな自動翻訳システムが漸く実現しそうです。日本の開発の歴史は意外に古く、今から約30年前、それがようやく実りつつあるということですね。

さて、英語との対比で言うと、特に日本語からの翻訳は難しいとされています。単純に言えば「あれはどうなった?」のように表現があいまいだったり、主語が全くなかったりするからですが、これら英語と日本語の視点の違いについて、言語学者の間では、昔から英語は、「鳥の視点」または「神の視点」、日本語は「虫の視点」と言われているとのこと。英語は、上から見下ろしている感覚で、自分も他人も、人間も物も同じように文法的に扱うが、日本語は、自分を一番下に置いて周りを見回すイメージで、自分と他人の関係は対等ではない。さらに、現在・過去・未来の時間軸も英語は全てを見下ろすのに対して、日本語は自分の注目している時点から見回す。つまり、英語の発想の根源は、「超越した神の視点で世界をすべて記述すべし」という理念であり、日本語の根底にあるものは、「虫のように自然に取り囲まれて生きており、共通の環境はわざわざ説明しない」という感覚、だそうです。

さて、上記を踏まえて、最近特に話題のAIについてですが、その開発においてもやはりアメリカを中心にして欧米でかなり進んでいるように思えます。が、一部の研究者から、「すべての情報を盛り込まなければならない欧米流、すべての情報を表現しようとする欧米流考え方は行き詰まり、環境を利用する日本的な世界観がDeep Learning(深層学習)と相性が良い」として、日本流が活かせる可能性が指摘されているそうです。いよいよ日本の出番でしょうか!?

(模)