皆さんはスーパーボウル (Super Bowl) をご存知でしょうか?
スーパーボウルは、プロアメリカンフットボールリーグ=NFL(National Football League)の優勝決定戦。MLBのワールドシリーズ、NBAのFinalを凌ぐ、アメリカ最大のスポーツイベントです。
スーパーボウル当日はスーパーボウル サンデー(Super Bowl Sunday)と呼ばれ、毎年2月上旬の第一日曜日に開催され、アメリカの祝日的な扱いにもなっています。今回、ご覧になった方もいるのではないでしょうか?
テレビ中継を見たことがある方は、プレイする前に大男達が円陣を組み、最後に大きな掛け声と拍手で解散し、ポジションへ散っていく光景を目にされたことがあると思います。
これはアメフト用語で「ハドル(huddle)」といわれるもので、攻守各々のチームがグラウンド上で行う作戦会議のことです。
アメフトはプレイをする度に、監督から無線で作戦指示を受けます。
例えば、攻撃側では司令塔であるクオーターバック(QB)が監督から受けた作戦をチーム全員に伝える必要があります。
この伝達を行う「会議」が、ハドルです。
プレイとプレイの間には時間制限があるため、QBは限られた時間の中で、複雑な作戦を的確に伝えなくてはなりません。
また敵地での試合では、観客がハドルを妨害するために大声で叫んだり騒いだりします。これはゲームの行方を左右する程の影響があるので、選手達にはハドル中、常に高い対話能力と集中力が必要になります。
またハドルには作戦会議とは別にもう一つ大切な意味があります。
それは「士気と結束を高める儀式」という側面です。
辞書で「huddle」を調べると、だいたい次のような意味が書かれています。
「huddle: (恐れや寒さなどから)群れる、身を寄せ合う」
次のプレイに向けてハドルを解散する際には、選手達はお互いに何度も声を掛け合い、自分自身とチームを鼓舞し結束を高めます。
ハドルにはそんな儀式的な役割もあります。
これは単なる精神論ではなく、ゲームを優勢に進める勢い(アメフト用語では「モメンタム momentum」と言います)を引き寄せる原動力として極めて重要な意味を持つ儀式なのです。
NFLの歴史上、攻撃時に全くハドル(作戦会議・儀式)を行わない「ノーハドルオフェンス」を得意としたジム・ケリーという名QBが居ました。
彼は現役時代4度、スーパーボウルに出場しましたが、遂に1度も勝つことができませんでした。
ハドルはTV画面を見ていると、ただの「景気付け」位にしか見えないのですが、実際は、極めて重要な意味を持ったコミュニケーションになっているのですね。