「罪な超音波」

昔、超音波の研究をしていた。超音波というのは人間の耳に聞こえないような、20kHz以上の高周波の音のこと。

音というのは空気の波であるからして、海の波と同じようにパワーがある。特に、超音波のように波の時間的・空間的密度が非常に高まると、非常に大きなパワーが出る。

超音波はモノを熱し、動かし、粉砕する。超音波の見せるいろいろな性質に、当時は純粋に興奮した。

ところで、当時の研究室では、23kHz付近の超音波を使っていた。当然、人には聞こえないと思いきや、これが聞こえてしまう。いや正確には、聞こえる人と聞こえない人がいる。人間の可聴周波数帯域は、20Hz~20kHzと言われてるが、かなり個人差が大きいのだと、当時学んだ。

私は聞こえる方だったので、実験で超音波ホーンが鳴り始めると、かなり苦痛だった。今ではモスキートノイズ着信音(17kHz)すら聞こえないが…。

関係ないが、ふつうモスキートノイズと言ったら、デジタル画像圧縮処理におけるノイズのこと。蚊の羽ばたき音を想像するのは、世間的には少数派。

(渉)