先週末に久しぶりに私鉄に乗る機会がありました。ホームから電車に乗り、さあ発車と手すりを掴んで電車が走り出すのを待ちました。電車が動き出し加速すると同時に、そばにいた子供が、何やら歌い始めました。それも音階をふんで、何やらハミングをしているようでした。電車が加速域を超え、巡航スピードに達すると、子供も歌うのを止めました。
実はよく聞いてみると、この電車は発車し加速する時に「♪ファソラシドレミファソ~♪」というような音階を奏でていたのです。
加速時の音(7秒)
後で分かった事ですが、この電車は、補聴器で有名なドイツ、シーメンス社が加速時に発生するインバータの不快な音を解消しようという目的と、保守面で「インバータの状態を音で確認できるようにした方がよい」との理由で作ったインバータを搭載しており、あのメロディーを奏でているとの事です。
一部では「歌っているみたい」「ドラクエのレベルアップのときみたい」などと、聞こえ方は様々なのですが、これまでの電車のイメージを変え、とても新鮮に感じられました。因みに日本では、騒音対策は音を消す方向に技術開発が行われており、このようなインバータが国内企業で製造される可能性は無いとのことです。
もちろんシーメンス社は音を消す事も出来るらしいのですが、チューニングすれば、「ファソラシドレミファソ~」ではなく、ベートベンもビックリ、あの「エリーゼのために」を加速時に演奏させることも可能だとのことです。開発に要する経費はどちらが大きいのか分かりませんが、騒音対策に対する日本とドイツの発想の違いに驚かされました。電車のモーター音を心地良い物に変えることが出来れば、新しい騒音対策にもなり、ひょっとして自殺、犯罪予防の効果にも役立つのではないでしょうか。
西洋の技術を真似することから始まった日本の技術開発は、その技術を育てた文化、発想の違いをもう一度見直してみる必要があるのかもしれません。