サンパチ・マイク

サンパチ・マイクをご存知でしょうか?
漫才などで、センターマイクとして使われる例のマイクです。
名前は知らずとも、皆さん、御覧になったことはあると思います。

このマイクの正式名称は「C-38B」。SONY製です。

サンパチマイクの原型は、ソニーとNHK技研が共同開発した「CU1-1」。
その後継である「CU-2A」は、1965年の紅白歌合戦で使用され
その後、テレビ映えを意識した仕様を施した「C-38A」を1969年にリリース。
1970年にファンタム電源機能を搭載した「C-38B」として販売開始されました。

既に50年以上の歴史のあるマイクですが、2015年にグッドデザイン賞を受賞しています。

もちろんデザインのみならず、マイク性能も優れており、収音範囲が広く、大きな音量も
歪むことなくクリアに録音できるため、漫才向きです。
フラットな音響特性が、自分向きということで、ミュージシャンの大瀧詠一さんは、
ボーカルマイクとして愛用していたそうです。

他にも、電池駆動に切り替えることができたり、指向性やフィルタ特性を変更したり、
単一/無指向の切り替えができたりと、多彩な機能が詰め込まれています。

このサンパチマイクですが、大分県日出町にあるソニー・グループの特例子会社、
「ソニー・太陽」で、手作業で作られています。

ソニー・太陽はソニー創業者の1人、井深大氏が障がい者の社会参加を支援する社会福祉法人
「太陽の家」の運営に賛同したことから、1978年に設立。
約190人の従業員のうち、障がいのある従業員は6割を超えるそうです。

井深氏の設立時の「障がい者の特権なしの厳しさで、健常者より優れたものを」との考えのもと、
サンパチマイクの他、マイクやヘッドホンなど高級オーディオ製品を生産。
組み立てだけでなく、開発設計から中核部品の製造、組み立て、サービスまで担務されています。

高機能マイクやヘッドホンのようなアナログ製品において、ばらつきのない性能を出すには
人による調整が不可欠と言われています。
ソニー・太陽には、そのノウハウが蓄積しており、中には「不具合のある製品は、手に持った
だけで違和感を抱く」というベテラン社員もいらっしゃるようです。

人手不足のなか、自動化やAI化は進まざるを得ませんが、こういった熟練者の手による
高精度なモノづくりの付加価値が下がることはなく、今後も守ってゆくべきと思います。

(一)