バイノーラル録音

最近、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)が話題になっています。
VRやARは人間の感覚をうまく利用し、他の場所にいるかのような体験を可能にする技術で、医療や産業の現場などで活用されはじめています。
聴覚の観点では、その人がいる環境と違う場所の音を体験することが可能になれば、VRやARの目的が達成されたことになります。

録音・再生や再生時に得られる臨場感に関しては、オーディオやエンタテインメントといった分野で様々な技術や研究成果が蓄積されてきました。
その中で「バイノーラル録音」というものがあります。

バイノーラル録音は、耳の内部構造を考慮した録音方法です。
簡単にいうと、左右の耳の中に小さなマイクロホンを設置して録音するようなイメージです。実際は人間の頭の形を模倣したマネキン等を利用します。
そのように録音された音をインナータイプのイアホンで聞けば、音の「空間的な情報」がよりクリアにわかります。
例えば空を飛ぶ飛行機の音が上から聞こえたり、誰かに呼びかけられたときの声がその人のいる場所から聞こえたりします。
ただ、耳や外耳道の形に個人差があるため、うまくいかないこともあります。

バイノーラル録音が提案されたのはずいぶん昔ですが、いままで脚光を浴びたことはありませんでした。
一方、VRやARの進歩とともに聴覚の空間表現が注目されるようになりました。
その流れに乗り、バイノーラル録音の時代が到来するかもしれません。

(桜)