サウンドスケープ

最近、「サウンドスケープ」という言葉をよく耳にしますが、どういう意味なのでしょうか。Wikipediaによると、「音の風景」のことだそうです。「ランドスケープ」の「ランド」を「サウンド」に置き換えたものです。要するに、「音環境」のことです。
「風景」である以上、ある「場所」に直結しています。風景は他の場所へ持っていくことができず、そこだけのものです。風景を見ればその場所のことを思い出し、その場所のことを考えれば自然にその風景が思い浮かびます。
そのため、サウンドスケープは「音」と「場所」を結びつける概念です。

最近、海外に出かける機会がありました。行先は南半球最大の都市、サンパウロです。数か月の間に複数回同じ場所に行くことになったため、その場所の音環境を次第に記憶し、普段生活している日本のサウンドスケープとの対比を面白く感じました。
大都会の音はどこへ行っても変わらないように思いますが、騒音の中にさりげなく流れる自然や人間による音は、自分がいる場所を思いださせてくれます。サンパウロにしか耳にしない音、日本でしか聞けない音、地球の両側にあっても種類が微妙に異なる音など、様々なパターンがあります。
サンパウロ独特の音といえば、パトカーや救急車の近未来的なサイレン、笛を吹きながら巡回するバイクパトロール。日本でしか聞けない音は、カラスの鳴き声、小学校の憂鬱そうな夕焼け小焼け、そしてトラックが高い女性の声で発する「左に曲がります」。
また、微妙に違うのは町のざわめきです。大勢の人が同時に話しているとき、内容はいずれも聞き取れないのですが、それぞれの言語の特徴が独特の効果を編み出します。
そう思いながら、様々な音風景に聞き入り、その特徴やニュアンスの違いを知りたくなります。音は波となって流れ去るため、一瞬の鼓動も聞き逃したくないものですね。

(桜)