歌う方も聴く方も唸ってしまう歌

モンゴルの「ホーミー」をご存知でしょうか。
1人の人間が同時に2つ(ときには3つ)の異なる音声を発する、驚くべき歌唱法のことです。低いうなり声のような一定の音を維持しながら、同時に笛のような高い音を発声します。先日訪れたモンゴル料理のお店で、初めて生のホーミーを体験することができました。高音は、笛のような鳥のさえずりのような、人間の声とは思えないなんとも不思議な音色で、うなるような低音とのハーモニーがたまらなく魅力的でした。

ホーミーは、地域によってホーメイともフーメイとも呼ばれ、アルタイ山脈周辺民族に伝わる歌唱法です。喉と口腔を利用して音を共鳴させることから、総じて喉歌と呼ばれています。ちなみに「ホーミー」とは、モンゴル語の「喉」という言葉に由来しているとか。起源は諸説ありはっきりしていませんが、小川の流れを真似たとか、岩山を吹き抜けていく風の音を真似たことが始まりと言われています。遊牧民たちの楽しみとしてだけでなく、家畜への呼びかけにも使われ、授乳したがらない家畜にホーミーを聞かせると授乳するようになるという説もあるとか。一説には、ホーミーを聞くことにより脳内にアルファ波が出るとか出ないとか…。是非はわかりませんが、そんな力もあるかもしれないと思わされる音色です。

舌を口蓋に触れないように近づけて、口腔内を2つの空間に区切り、そこで声を共鳴させるというのですが、かなりの練習が必要。また、肺機能にも負担が大きく、間違った方法で練習すると肋骨がずれるとも言われています。ちょっと試してみましたが、もちろん高音が出るには至らず。練習する場所を選ばないと周囲から変な目
で見られてしまいそうです。

自然の音を真似るところから始まったホーミー。いつかモンゴルの大草原の真ん中で、吹き抜ける風や流れる小川の音と一緒に耳を傾けてみたいものです。

(瑠)