「木の中を流れる水」

木の幹に耳をあててみると、水の流れる音がするといいます。春を迎える頃は木々の活動が活発になり、その音が聞きやすいそうです。

世界遺産に登録されている白神山地は、青森から秋田にかけて位置する寒さの厳しい山です。そこには広大なブナの原生林が広がっています。冬の間、厚く積もる雪の重みでブナの枝は大きくしなってつぶれかけながら、じっと春を待っています。

そして春が到来すると、目覚めたように根からたくさんの水を吸い上げます。その水が幹の中をのぼり、幹を立ち上げ、枝がぐぐっと起き上がっていきます。そしてその幹に耳をあてると、水が上がっていく音がよく聞こえるのだそうです。

また、白神の観光コースの中には、木々が水を吸い上げていく音をよく聞けるように、聴診器が用意されているのだとか。これならよく聞こえそうですね。

寡黙に見える木々ですが、幹の中では忙しく音を立てている。たくましい生命の音を是非一度聴いてみたいと思っています。自然の中には私がまだ知らない音が無数にありそうです。

(津)