ものを言う廊下~うぐいすばり~

修学旅行などで京都を訪れたことのある方は多いと思いますが、二条城や知恩院の廊下に共通するものと言われて何だか分かりますか?実はどちらも「ものを言う廊下」なのです。とは言っても人間のように言葉を喋るわけではありません。廊下を歩くと「キュッ、キュッ」と音がして部屋の中にいる人に第三者の接近を知らせるのです。

では、どうして歩くと音がでるのでしょうか?えっ?建物が古くなって軋んでいるんだろう、ですって!確かに古~い建物に見られる独特の仕組みですが、古くなって軋んでいるわけじゃありません。床下に仕掛けが施されていて、意図的に音が出るようにしてあるのです。

通常の床板は「根太木」という床を支える部品に密着させて釘などで固定されていますが、鴬張りの場合は「根太木」と床板とを僅かに隙間を空けて「鎹(かすがい)」という特殊な部品で若干のアソビを残して固定しています。

そんな仕掛けがされている床の上を誰かが歩くと重さで床板が下へ押し下げられます。この時に床板と鎹との摩擦音が発生し、「キュッ、キュッ」と鳴るのです。では、なぜこんな手の込んだ細工をしていたのでしょうか?

江戸時代以前の日本は、言ってみれば戦乱の世の中であり、刺客が送り込まれることがあれば、間諜(スパイ)が紛れ込んでいることもあります。こうした歓迎されざる客人の多くは伊賀者とか甲賀者とかと言われる「忍者」です。その「忍者」を除けるために「鴬張り」が用いられたのです。忍者は「忍び足」で気配を消して行動しますが、「鴬張り」は 忍び足のように静かにゆっくりとあるくと余計に大きな音が出ますから、有効な対策であったと言われています。

また、「うぐいすばり」の名前は、鶯が沢などを渡るときにだす「キョッキョッ」という小刻みで早口の鳴き声に似ていることに由来しているそうです。(鶯はいつでも「ホー・ホケキョ」と鳴くもんだと思っていたのですが、実際は色々なバリエーションがあるのだそうです。ちなみに前述の鳴き声は「鶯の谷渡り」というそうです。)

鶯の谷渡り

ちなみに、うぐいすばりの廊下などを一番静かに歩ける方法は「爪先立ちの摺り足」だと言われています。興味のある方は試してみては如何でしょうか?

(泉)